この記事でわかること
- 2025年の流行りの曲に共通するサウンド、構成、テーマの傾向
- TikTokやSNSでの拡散がヒットを生み出す仕組み
- J-POPと洋楽の融合が進む背景と音楽制作への影響
- 作曲家やクリエイターが意識すべきトレンドサウンドと制作手法
- 流行を取り入れながらも自分らしさを失わないための考え方
導入:なぜ「流行りの曲」は次々と変わるのか?
「今年のヒット曲は去年とまったく違う」――多くのリスナーがそう感じるのは、音楽業界のトレンドサイクルが極端に短くなっているからです。以前は3〜5年単位でサウンドの流行が入れ替わっていましたが、現在では半年、あるいは数カ月単位で新しい傾向が登場します。
その理由の中心にあるのが、SNSのアルゴリズムです。TikTokやYouTube Shortsのような短尺動画プラットフォームが主導する現代では、「再生時間の短さ」と「拡散のスピード」がヒットの条件を左右します。つまり、ヒットを生むのはテレビやラジオではなく、ユーザーのシェアと再生の波なのです。
この変化により、従来の“名曲”の条件――メロディの美しさや歌唱力――だけでなく、1フレーズの中毒性やリズムの抜け感といった要素が重視されるようになりました。2025年に注目を集める最新チャートやバズソングは、The First Timesの特集記事で詳しく紹介されており、SNS発の楽曲が音楽シーン全体を牽引している実態が明らかにされています。
2025年の流行りの曲に共通する3つのサウンド要素
1. ハイブリッド・ジャンルの融合
2025年の音楽シーンを象徴するキーワードは「ハイブリッド化」です。ジャンルという枠組みが曖昧になり、アーティストは複数の音楽文化を掛け合わせて独自のサウンドを生み出しています。
例として以下のような流れがあります。
- K-POP × UK Garage × R&B(例:NewJeans「ETA」「Cool With You」)
- J-POP × Lo-fi Hip-Hop × City Pop(例:Vaundy「タイムパラドックス」)
- Alternative Rock × Hyperpop(例:ずっと真夜中でいいのに。「残機」)
このような組み合わせが支持されるのは、リスナーの耳が「一つのジャンル」に飽きているからです。プレイリスト文化が定着した今、リスナーは「ジャンル」よりも「気分」や「雰囲気」で音楽を選ぶ傾向にあります。音作りの現場では、異なるジャンルの要素をまとめ上げるためにミックスバランスの統一感が重要になります。特に、ベースとリズムの関係性や空間系エフェクト(リバーブ、ディレイ)の配置がサウンド全体の印象を左右します。
2. ミッドテンポと浮遊感のあるコード進行
2025年の主流テンポはBPM90〜110。ヒップホップやR&Bの影響を受けながらも、J-POPのメロディ重視の構成に適したテンポ帯です。ミッドテンポはリスナーに“余白”を感じさせ、歌詞をより印象的に伝えることができます。
コード進行の面では、メジャーキーを基調としながらも、あえて一音を変化させることで幻想的な響きを作り出す手法が増えています。たとえばCメジャーにE♭を混ぜる、FメジャーにG♭を差し込むといったリディアンスケールの応用です。この「浮遊感のある響き」は、映画やアニメの世界観と親和性が高く、タイアップ曲にも多く見られます。
3. AIツールとボーカル処理の進化
2025年は、AIが音楽制作の現場に完全に浸透した年でもあります。AIが自動でメロディやコード進行を提案し、ボーカルのピッチ補正や声質変換を行うことが可能になりました。
- AIボイスモデリング:特定の歌手の声質を模倣し、自分の歌声を好みのスタイルに変換できる。
- 自動マスタリングAI:曲全体の音量バランスをAIが解析し、プロレベルのクオリティを再現する。
- 生成音源プラグイン:ボーカルやリズムをリアルタイムで生成し、既存の曲と組み合わせる。
これにより、プロアマ問わず“世界レベルのサウンド”を作ることが可能になりました。ただし、流行りの曲を作る上で最も大切なのは、AIを“使いこなす感性”です。ツールが進化しても、音楽の本質は人間の感情にあります。
TikTokが生んだ「15秒のヒット構造」
TikTokを中心にしたショート動画文化は、ヒット曲の作り方そのものを変えました。従来の曲構成が「Aメロ → Bメロ → サビ」だったのに対し、今では冒頭からサビに入る形式が主流になっています。トレンド構成の特徴は次のとおりです。
- 冒頭5秒で印象的なリズムまたはフレーズを配置
- 15秒以内にサビを提示し、聴き手を離さない
- 歌詞は短く、感情の直接表現を重視する
この流れを象徴するのが、YOASOBIの「アイドル」やtuki.の「晩餐歌」です。どちらも短いフレーズで強烈な印象を残し、SNS拡散を意識した構成になっています。さらに、リスナー自身が“曲の演出者”として関わる点も重要です。音楽が「共有される物語」へと進化し、ヒットの寿命を伸ばす仕組みが生まれました。
こうしたデータを体系的に整理した分析は、Accioの2025年音楽トレンドレポートでも確認できます。国内外でヒットする楽曲の多くが、「15秒で記憶に残る」構造を意識して設計されているのです。
J-POPと洋楽のクロスオーバー
SpotifyやApple Musicの普及により、J-POPと洋楽の境界はますます曖昧になっています。リスナーは自然と海外サウンドに触れ、日本のアーティストも海外的なリズムやミックス手法を採り入れるようになりました。
項目/J-POPの特徴/洋楽の特徴/現在の融合形
- リズム:8ビート中心/グルーヴとベース重視/AfrobeatやDrillの影響を加える
- コード:転調が多い/単純で繰り返しが多い/ミニマルで印象的なループ化
- 歌詞:情緒的で叙情的/メッセージ重視/ハーフ英語・ハーフ日本語が主流
- 音像:ボーカル中心/ビートと空間表現重視/立体的でアンビエントな空気感
Aimerや幾田りら、yamaといったアーティストがこの動きの中心にいます。彼らは日本語の詩的な響きを保ちながらも、英語的なリズム感を織り交ぜ、グローバルに通用するサウンドを確立しています。
音楽制作ツールの新潮流とプロの現場
音楽制作ソフト(DAW)は年々進化し、AIによる自動ミックスやマスタリングが一般的になりました。特に「Ozone 11」や「Nectar 4」などの最新プラグインは、プロ並みの仕上がりをワンクリックで実現できます。自宅でもレコード会社レベルのクオリティを生み出せる時代が到来しています。
- 作曲・編曲:Ableton Live, Logic Pro, Studio One
- サウンドデザイン:Serum, Vital, Omnisphere
- リズム制作:XO, Atlas 2, Loopcloud
- マスタリング:Ozone 11, Neutron 5
- ボーカル処理:Nectar 4, Melodyne 5
これらを活用する上で大切なのは「音の整理術」です。詰め込みすぎず、余白を活かすミックスこそが今の流行りサウンドの鍵といえます。
歌詞と感情表現のトレンド
流行りの曲の特徴は、サウンドだけでなく言葉の選び方にも表れます。短く、直接的で、共感を得やすい歌詞が主流となりつつあります。
- 「好き」「寂しい」「戻れない」といった感情をストレートに表現
- 長文よりも1行の余白で聴かせる簡潔な構成
- 意味を限定しない曖昧な表現で、リスナーが自身の体験を重ねられる
作詞家のAyase(YOASOBI)や野田洋次郎(RADWIMPS)は、文学的でありながら大衆性を持つ表現で、現代ヒットの象徴的存在となっています。
ライブと音源の境界が消える時代へ
ライブ配信やARステージなど、リアルとバーチャルを融合させた音楽体験が一般化しています。アーティストはSNS上でリスナーの反応を見ながら楽曲を進化させ、作品を「完成品」ではなく「共創物」として発表する時代が到来しました。
流行を超える音楽とは何か
流行を追うだけでは一過性に終わります。長く愛される音楽には、「孤独」「愛」「成長」「喪失」といった普遍的テーマが存在します。流行を観察し、自分の価値観を言語化し、リスナーとの対話を続けることで、トレンドを超えた作品が生まれるのです。
まとめ:流行りの曲を作るための3ステップ
- 1: トレンドを分析する(TikTokやSpotifyチャートを確認)
- 2: 自分の強みを整理する(声質・作曲傾向の理解)
- 3: 流行と個性を融合させる(AIツールやコラボで実践)
音楽トレンドは加速していますが、「共感」「誠実さ」「新しさ」の3つを持つ楽曲は時代を越えて聴かれ続けます。
